スライドステージに乗り、観客に背を向けバックステージへと向かう。
そしてバックステージ中央で再びファンに向かう。
「私たちは良く知っています、キャンディーズは素晴らしいです」
「あたし達のキャンディーズは、純粋なまま、今、この瞬間に終わります。」
「最後のステージを、みなさんと一緒に、このステージで、精一杯、歌ったこと、ほんとうに、嬉しく思います。」
「最後の曲は、やはりこの唄を歌いたいと思います。」
つばさ...
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初めてこの曲が披露されたのは、前年8月の大阪梅田コマ劇場であった。
解散宣言をしてから色々悩んで、自分達の気持ちを素直に現す言葉が
欲しかった。そして大阪のホテルで一晩かかって作り上げたのが
この「つばさ」である。
以来、コンサートの最後には必ず歌い、皆に分かって欲しいという
気持ちをぶつけてきた。そして今日、最後にこの曲を歌う。
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3人が静かに歌い始める。会場全体が静まる。最後の曲を聞くために。
間奏で3人が、今までの気持ちを叫ぶ。
「本当に私たちは幸せでした!」
歌が終わって、いつまでも手を振り「ありがとう」と叫ぶ3人。
ランがスーに抱きつき、ミキが被さるように寄り添い泣きじゃくる。
演奏が終わり、3人の泣き声がマイクを通して伝わってくる。
花火が点火され「わたしたちはしあわせでした」「みなさんありがとう」と浮かび上がる。セリが沈み始め、3人はもう一度ファンに向かって
手を振る。ランは立っているのがやっと、と言う感じで、2人に抱きかかえられるように、でも最後の力を出して左手を大きく上げる。
再び花火が点火され、「さよなら」と浮かびでた。そして3羽の鳥がそれぞれの方向に向かって飛び立っていった。
セリが沈み、3人の手がステージから消えていく。
青い鳥は右上方へ、
黄色い鳥は左上方へ、
赤い鳥は真上へ、
そして、鳥は星になった・・・
これが本当の最後になった。
そして以来20年、キャンディーズは姿を見せていない。