「よし、今度はミキのパートを録るぞ。ミキ、準備はいいか?」
「はい、OKです。」

前奏が流れミキが歌いだす。しかし数回繰り返しても、どうにもコーラスが上手く乗らない。

「う〜ん、もうちょっとマイクから離れてみて。それと息継ぎの場所がおかしいよ。譜面確認して。」
「はい、すみません。。。」
「あの、私達がバックで一緒に歌った方が、ミキも歌いやすいと思うんですけど。」
「ああ、構わないよ。マイクから離れて一緒に歌ってみようか。」
「ありがとうございます。。ありがとう。」

「よーし、OK! 2人の声も入っちゃったけど、綺麗にまとまってるから、これで決めよう。お互いの声が交わりあってより良くなるのかな。。。もう一度ランのパートを録ってみようか、今と同じようにバックで2人も一緒に。」

それはランの機転から生まれた、まったく偶然のものだった。しかし確かにそれぞれを別に録るより一緒に歌った方が綺麗にまとまるのだった。


「終わったぁ! もう歌わなくていいのね?」
「スーったら。でもやっと終わったのね。どんなレコードが出来るのかなぁ?」
「ねぇねぇ、お腹空かない? あたしペコペコよ。何か食べようよ。」
「もう、感激に浸る暇もないんだから。」
「お腹が減るのは自然の摂理です。」
「分かったわよ。じゃぁいつものおそば屋さんに行く?」
「やった!」
「ねぇ、ミキも行くでしょ?」
「もちろん。でもちょっと確認したいことがあるんだけど」
「な〜に?」
「私の歌、ちゃんと録れてるのかな? 音、外してなかった?」
「あのねぇ〜、、、まさかもう一回、なんて言わないでしょうね?スーちゃんが怒るわよ。」
「(笑) そうね、自然の摂理にはカナイマセン。」


結局夜中までかかったレコーディングも無事に終わり、後はジャケット写真撮り、衣装合わせ、デビューイベントの打ちあわせ、雑誌取材、、、時間が足りないくらいだ。